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侍になりたかったアメリカ人 其の七  | 世界から見た日本
旧イデオロギーの喪失

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(セレモニーは大成功に終わった)

二日明けての月曜日、今日は僕たちが行ったイベント後初の練習日。

いつもにもまして道場へ行く時間が待ち遠しかった。

(みんなセレモニーについてどう思ったんだろう?)

僕はワクワクしながら道場の扉を開いた。

『こんばんわぁあああ!!』

練習が始まったその時、道場主からこのようなアナウンスがあった。




あ~、先日のパーティーの席では突然のハプニングがあり、皆さん困惑してしまわれた方もいらっしゃるかと思われます。 

ご父兄の皆様の中には、私どもに(この道場は剣術やそれに関わる宗教めいた教えの布教活動をしているのか? )という質問も承りました。 我が道場は1882年(明治15年)に嘉納治五郎氏によって創始された、日本の国技の一つである ”柔道” を奨励する為にノンプロフィットオーガナゼーションとして設立されだ道場で、『精力善用』『自他共栄』を目指し、子供達の躾け指導、学力向上を目指す場であります。皆さんが懸念されるような事を奨励してはおりません事を改めてここで再確認しておきます。』

そう話している先生の横で、うつむき加減になる彼の表情を、僕が見逃す事はありませんでした・・・・・・


どのような小さなグループの中にも必ず共有するイデオロギーがあります。


今回僕が一番心配していたのは【武士道】をなんらかの宗教と勘違いされるのでは? 

と言う懸念でしたが、それは 李登輝氏の[武士道解題] を読んで武士道が世界の精神哲学の集大成である事を知り自分の中では解決していました。

今回宗教的な理由での困惑ももちろんありました。

それよりも何よりも問題視されたのは【武士道】と【柔道】のイデオロギーの差異でした。


柔道は武器を持たずして戦う武道です。



柔道創始者の嘉納先生が柔道普及の旅にヨーロッパに出かけた時、船の中でからかって来た外国人を投げ飛ばした時、相手の頭の下に手を差し入れてケガを防いだ。という逸話にもあるように。

嘉納氏が考案して広めて来た【柔らかい道】は【精力善用】と【自他共栄】のキャッチフレーズに見られるように、もともと人を怪我をさせる目的を持っておらず、相手を思いやる精神性を兼ね備えたものです。


一方、剣の道は鎌倉の時代より戦国の代を経て、刀の強度と殺傷能力の向上と共に発展して行きました。


 剣道家の皆様、お気を悪くなさらないで下さい。泰平の代江戸時代からは人間形成を目指す内容へ変化して行き、1912年(大正元年)に剣術が剣道と名称を変えた時点では既に真剣を使った殺傷目的の技では無く、精神性を伴ったスポーツへと変化していたのですから。


ここで道場の人々が比較したのは 新渡戸稲造 の【武士道】では無く、山岡鉄舟でも無い、山本常朝の【葉隠】でも無い。 第二次世界大戦中の【玉砕】、【腹切り】に見られる、旧帝国軍人が好んで使った【武士道に則って】というフレーズだ。

戦後、アメリカは剣道も柔道も禁止して、この【武士道精神】の撲滅を企てた。

だから、今回一番違和感を感じていたのが、実はアメリカ人より僕たち日本人だった・・・・・。

この件の後、他の日本人柔道家からお借りした飯田 進著の【地獄の日本兵】にも武士道の精神に則って犬死にする人々が後を絶たなかった様子が書いてあった。

武器を持って戦う事を一切放棄した国の国民が、戦後受けた教育は武士道精神を旧式な狂った考え方と、何処か隅っこのほうへ追いやってしまったのかもしれない。だから、こういう事には、ちょっとアレルギーがあるみたい。


精神性だけでも語り継いでいく事が出来なかったものか?


事態は道場内でスキャンダルじみた内容へ発展して行って、一時は彼の道場追放が囁かれた。

しかし、ミーティングが行われなんとか収拾がついたようです。


今回、侍になる事を強く、強く望んだアメリカ人の彼の試み。

彼が果たして真の侍に成り得たかどうかは別として、彼の試みが、実はとても嬉しかった。
 


僕が生まれ育った国の文化をそこまで愛してくれていることに、感謝の気持ちでいっぱいだった。

それを支え一緒に作り上げていく行程で、僕が自分自身の中に発見した旧イデオロギーの喪失。 

それを感じ取れば感じ取る程、彼が見ている武士道精神が、僕の心のDNAの中から呼び起こされる事を強く願って止まなかった・・・・。

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テーマ=文明・文化&思想 - ジャンル=学問・文化・芸術

【2010/10/22 14:44】   トラックバック(0) | コメント(0) | Top↑






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